ピノキオ

作品紹介

ノビロ!ハナ!

ピノキオは生まれたその時こそ完全だったのだ

 童話や昔話に出てくるキャラクターの多くは異形の存在で、それ故の不遇さが物語のテーマになっている場合が多いのだが、僕が子供の頃からどこか他とは違うなと気になり続けていたのがピノキオである。
 運良く命を得た操り人形が糸の束縛から逃れた途端、裏社会へと突入して破滅寸前で窮地を逃れるといったことを繰り返す。裏路地や地下、怪しいネオンライトにときめいてしまう少年の、しかしそこには不遇意識はあまり感じられない。むしろ人間社会に取り込まれるのを嫌って「ほら!どんどん鼻が伸びるよ!」「見て!ロバの耳が生えてきたよ!」なんて個性的な自分をハッピーにさえ思っているようにも思える。お話の最後には、個性もない(かわいげがない)人間の姿に変えられてしまい、捕まった猫のように微妙な甘え顔を見せる。
 このお話が伝えたいことは大人になった今は解るけれど、子供の僕にはそのラストが気持ち悪くて仕方がなかった。いや違う。大人になった今でも気持ち悪い。ダンボや一寸法師と違ってピノキオ自身は命を得た瞬間に完全だったんだよ。
 というわけで、僕が描くピノキオ。ストーリーは完全なるオリジナル。人里離れた村で命を得た木偶人形が、村人の思惑や因習を蹴散らして大暴れ。しかし大人達には事情がある。あの手この手を使って型にはめようとこれまた大騒ぎ。
 明るい音楽と童話の世界をモチーフに繰り広げられるシニカルミュージカル。オーディション合格者を含めたユニークなキャスト達が歌って踊って躍動する愉快なステージです。
 誰も見たことのないピノキオを体験してください。

弥富又八