おぼろげだった人影は足音と共にはっきりしてくる。
私は何とも言えない期待と恐怖のなか足音のする方をじっと見つめる。
しかしシルエットははっきりしてきてもなぜか顔だけぼんやりとしていてはっきり見えない
やがて足音は私の前で止まり、足音の主が私に声をかける
「今日は君と友達になれたお祝いのパーティーだよ。約束したものは持ってきた?」
『これって…』
私は声の主の顔を見る…
それは自分の書いていた小説の『大きな顔の男』そのものだった。
『この顔どこかで見たような…いや自分の書いていた小説の登場人物だからかな?…いや違う。もっと昔どこかで見たような…それにこの声…』
私の微かな記憶をたどる。
ダメだ思い出せない。何かが胸の奥で引っかかってる感じがする。思い出したいような…思い出したくないような変な感じ。
男がもう一度ゆっくり私に向かって言う
「約束したものは持ってきた?」
「…約束したもの…?」
思わず口にした瞬間何かがはじけたように記憶が蘇る
そうだ、あれは私が幼かった頃一度だけ連れて行ってもらったあのお屋敷で一人で遊んでいた時、あまりにもお屋敷が大きくて迷子になってしまった。
迷子になった私は泣きながら母を探しているうちにいつの間にか『入ってはいけない』と言われた場所に足を踏み入れてしまった。
「どうしたの?」
後ろから声がする。振り返るとそこには・・・
つづく |